ドゥ・ケルバン腱鞘炎とは?原因・特徴・装具の考え方を解説

「ペットボトルのフタを開けると痛い」
「子どもを抱っこすると手首がズキッとする」

その痛み、ドゥ・ケルバン腱鞘炎かもしれません。

ドゥ・ケルバン腱鞘炎は、手首の腱鞘を通る短母指伸筋腱と長母指外転筋腱の間に起こる腱鞘炎です。
手首の母指側の疼痛と腫脹があり、母指の外転や手首の運動で痛みます。

痛む場所が近い、CM関節症や関節リウマチとの判別が重要となります。 X線検査で異常がなくこの部分に痛みがあるときは、下に紹介するテストを実施して判別します。

▶ この記事のポイント

・ドゥ・ケルバン腱鞘炎の原因と発症メカニズム
・CM関節症との違い(臨床での見分け方)
・装具療法の目的と固定すべき部位
・日常生活で悪化しやすい動作
・治療の流れ

ドゥ・ケルバン腱鞘炎とは

ドゥ・ケルバン腱鞘炎
短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通る腱鞘との腱鞘炎

ドゥ・ケルバン腱鞘炎は、母指の外転に関わる長母指外転筋腱と、母指の伸展に関わる短母指伸筋腱が通る
腱鞘(伸筋支帯/手背第1コンパートメント)との間に繰り返される摩擦によって腱鞘が炎症を起こすことで生じる狭窄性腱鞘炎です。

圧倒的に女性の発症が多く、20~30代と50歳前後に発症のピークがあります。


原因

パソコン作業などの母指の酷使や、妊娠・出産・更年期障害のホルモンの関与、
あるいは授乳など新生児の頭部を保持する際の母指を外転する動作が原因となることが多いようです。

中年以降の女性の場合には、更年期によるホルモン分泌変動の影響と火事による手の酷使などが原因となります。


症状


テスト

ドゥ・ケルバン腱鞘炎のセルフチェックとして、次の3つの方法があります。

どのテストでも痛みを覚えるようであれば、ドゥ・ケルバン腱鞘炎の疑いがあるので早めに整形外科を受診しましょう。

①アイヒホッフテスト

アイヒホッフテスト
母指を握りこみ尺屈すると橈側側に痛みが出る

母指を握りこみと2つの腱は伸張された状態になります。

ここで手首を尺屈するとさらに強く伸張されるので、腱鞘炎が起きていると強い痛みが生じます。

②フィンケルシュタインテスト

フィンケルシュタインテスト
健側の手で患側の母指を小指側に引っ張ると痛みが生じる

痛みを感じる手とは反対の手で痛みがある手の母指を小指側に引っ張ります。

痛みのある部分の痛みが強くなるかテストします。

③岩原・野末のサイン

岩原・野末のサイン
手首をなるべく掌屈した状態で指を拡げると痛みが生じる

手首は直角かそれ以上に掌屈します。
図のように母指を掌側外転、他の4指は伸展させます。

これで患部の痛みが強くなるようであればドゥ・ケルバン腱鞘炎を疑います。

※痛みが強い場合は無理に行わないでください。悪化する可能性があります。

CM関節症との判別のためにもCM関節症とは何なのか知る必要もあります。 CM関節症とは?装具の種類・適応・固定の仕組みを義肢装具士が解説 をご覧ください。


保存療法

①安静の保持

母指に負担のかかる動作を避け、安静位に保ちます。

サポーターなどの装具固定、テーピングの他、症状が強い場合にはシーネ固定をすることもあります。

②薬物療法

炎症による腫れや疼痛抑制のために非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の内服や湿布、塗り薬があります。

③注射療法

日常生活に支障をきたすほどの痛みがあるときには、腱鞘内へのステロイド注射を行います。

「トリアムシノロン」というステロイド剤は即効性が期待できますが、繰り返し行うと腱断裂する可能性があるため頻繁には行えません。

④手術療法

ステロイド注射を行っても効果が無いときや、再発を繰り返す場合には手術で根本治療を行います。

「腱鞘切開手術」で肥厚した腱鞘を切開し、一部を切り離すことで腱鞘内の容積を拡げ腱の動きを改善します。

術後1週間後の抜糸までは手を濡らさないように注意する必要がありますが、
術後3~4日程度から簡単な運動を再開し、スポーツや力仕事など酷使する動作は2週間後の復帰を基本とします。


装具療法

ドゥ・ケルバン腱鞘炎の装具
母指から手関節までを安静位に保持する装具の例

装具により患部を固定します。

ドゥ・ケルバン腱鞘炎では、母指外転筋や短母指伸筋の運動を制限することが安静保持のために必要なことです。

母指から手関節までが動かないように、プラスチックステーなどで肢位を固定する機構が内蔵された製品が多いです。


CM関節症に用いられる装具の例

ドゥ・ケルバン腱鞘炎には多くのレディメイド装具が販売されています。
ここでは最も有名なものを紹介します。

P.O.サムスパイカ

P.O.サムスパイカ
母指手関節固定装具(P.O.サムスパイカ)

装具のポイント

母指のみの簡易サポーターでは不十分なことが多く、
母指〜手関節までを一体で固定することが重要です。


CM関節症との違い

CM関節症とドゥ・ケルバン腱鞘炎は、いずれも母指周囲に痛みを生じるため混同されやすい疾患です。
しかし、障害される部位と病態は大きく異なります。

項目CM関節症ドゥ・ケルバン腱鞘炎
障害部位CM関節(関節)長母指外転筋・短母指伸筋の腱鞘
痛みの場所母指の付け根(関節部)橈骨茎状突起部(手首の親指側)
原因軟骨摩耗・関節不安定性腱の使いすぎによる炎症
特徴変形・亜脱臼あり腫脹・圧痛が中心
テストグラインドテスト陽性フィンケルシュタインテスト陽性

特に重要なのは「痛みの位置」です。
母指の付け根の深部痛であればCM関節症、手首側の表層の痛みであれば腱鞘炎の可能性が高いです。


まとめ

ドゥ・ケルバン腱鞘炎は、母指の使いすぎによって生じる腱鞘炎で、
特に手首の親指側に痛みが出るのが特徴です。

治療は保存療法が基本であり、
母指〜手関節をしっかり固定する装具療法が非常に有効です。

痛みを我慢して使い続けると慢性化するため、
早期の対応と適切な固定が改善の鍵となります。

装具の使用について
治療用装具は、医師の診察・処方に基づき、症状や目的に合わせて選択されるものです。 自己判断で購入・使用すると、症状に合わなかったり、療養費の対象外となる場合があります。 痛みが続く場合は、整形外科などの医療機関で相談してください。
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