前腕の神経麻痺とは?橈骨神経麻痺・正中神経麻痺・尺骨神経麻痺の違いを解説

前腕〜手には複数の重要な末梢神経が走行しており、 それぞれ障害されると特徴的な筋萎縮や変形、運動障害を生じます。

代表的なのが、

の3つです。

義肢装具士国家試験でも問われるこれらの違いは、混同しやすいものの一つです。

この記事では、義肢装具士が臨床で役立つようこれらの違いについて解説します。

それぞれ障害される筋肉や感覚領域が異なるため、 「どんな変形が出るのか」「どの運動ができなくなるのか」が大きく異なります。

本記事では、 各神経麻痺の特徴をイラスト付きで分かりやすく解説します。

この記事で分かること

  • 橈骨神経・正中神経・尺骨神経の違い
  • 特徴的な手の変形
  • 筋萎縮が起こる場所
  • 障害される運動
  • 感覚障害領域
  • 装具療法との関係

まずはここだけ覚える

神経 代表変形 できなくなる動き
橈骨神経 下垂手 手関節伸展
正中神経 猿手 母指対立
尺骨神経 鷲手 指の外転・内転

前腕〜手を支配する3つの主要神経

手の運動や感覚は主に以下の3つの神経によって支配されています。

  • 橈骨神経
  • 正中神経
  • 尺骨神経

それぞれ担当する筋肉や感覚領域が異なるため、 障害された神経によって特徴的な症状が現れます。

前腕の主要神経
橈骨神経・正中神経・尺骨神経の走行イメージ

3つの神経麻痺の違い

橈骨神経麻痺 正中神経麻痺 尺骨神経麻痺
特徴的変形 下垂手 猿手 鷲手
筋萎縮 前腕伸筋群 母指球筋 骨間筋・小指球筋
障害運動 手関節伸展 母指対立 指の外転・内転
感覚障害 手背橈側 母指〜環指橈側 小指・環指尺側

橈骨神経麻痺

下垂手
橈骨神経麻痺による下垂手(wrist drop)

橈骨神経は主に前腕の伸筋群を支配しています。

そのため麻痺すると、 手関節や指を伸ばすことができなくなり、 特徴的な 下垂手(wrist drop) を呈します。

下垂手では、 カックアップ装具 によって手関節背屈位を保持し、 把持機能を補助することがあります。

主な症状

  • 手関節伸展障害
  • 指伸展障害
  • 母指伸展障害
  • 前腕伸筋群の筋萎縮
  • 手背橈側の感覚障害

代表的原因

  • 上腕骨骨幹部骨折
  • Saturday night palsy
  • 長時間圧迫

詳しくは 橈骨神経麻痺 でも詳しく解説しています。

正中神経麻痺

猿手
正中神経麻痺による猿手

正中神経は母指球筋や前腕屈筋群の一部を支配しています。

麻痺すると母指対立運動が困難となり、 母指球筋萎縮による 猿手変形 がみられます。

主な症状

  • 母指対立障害
  • OKサイン障害
  • 母指球筋萎縮
  • 母指〜環指橈側の感覚障害

代表的原因

関連疾患として 手根管症候群 もあわせてご覧ください。

尺骨神経麻痺

鷲手
尺骨神経麻痺による鷲手

尺骨神経は骨間筋や小指球筋を支配しています。

麻痺するとMP関節過伸展とIP関節屈曲が目立ち、 鷲手(claw hand) 変形がみられます。

鷲手変形では、 手のスプリント を用いてMP関節屈曲補助を行うことがあります。

主な症状

  • 指の外転・内転障害
  • 骨間筋萎縮
  • Froment徴候
  • 小指・環指尺側の感覚障害

代表的原因

  • 肘部管症候群
  • Guyon管症候群
  • 尺骨神経損傷

神経麻痺と装具療法

末梢神経麻痺では、 関節拘縮予防や機能補助のために装具療法が重要になります。

装具療法については 手関節装具 手のスプリント でも詳しく解説しています。

まとめ

神経麻痺の違いまとめ

橈骨神経 正中神経 尺骨神経
変形 下垂手 猿手 鷲手
萎縮 前腕伸筋群 母指球筋 骨間筋
障害運動 伸展 母指対立 指外転・内転
代表疾患 Saturday night palsy 手根管症候群 肘部管症候群

橈骨神経麻痺・正中神経麻痺・尺骨神経麻痺では、 障害される筋肉や感覚領域が異なるため、 特徴的な変形や運動障害が現れます。

  • 橈骨神経麻痺 → 下垂手
  • 正中神経麻痺 → 猿手
  • 尺骨神経麻痺 → 鷲手

それぞれの特徴を理解することで、 神経障害の鑑別や装具療法の考え方につながります。

記事の参考文献について
本記事は、義肢装具士としての臨床経験および、 学会監修書籍・専門文献を参考に作成しています。
詳しくは 参考文献・制作方針 をご覧ください。
装具の使用について
治療用装具は、医師の診察・処方に基づき、症状や目的に合わせて選択されるものです。 自己判断で購入・使用すると、症状に合わなかったり、療養費の対象外となる場合があります。 痛みが続く場合は、整形外科などの医療機関で相談してください。
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