手首・親指・指が痛い原因は?痛む場所と受診の目安を義肢装具士が解説

ペットボトルのフタを開けると親指の付け根が痛い。
スマホを持つと手首の親指側がズキッとする。
指を曲げ伸ばしすると引っかかる。
突き指のあとから指先が伸びにくい。

このような手首・親指・指の痛みには、ドゥ・ケルバン腱鞘炎、母指CM関節症、ばね指、マレット指など、いくつかの原因が考えられます。

ただし、痛みの場所や症状からある程度の目安をつけることはできても、自己判断だけで原因を決めることはできません。
本記事では、痛む場所・痛み方・確認されることが多いテストをもとに、考えられる原因と整形外科を受診する目安を義肢装具士の視点から解説します。

▶ この記事のポイント

・手首の親指側の痛みではドゥ・ケルバン腱鞘炎が考えられる
・親指の付け根の痛みでは母指CM関節症が考えられる
・指の付け根の痛みや引っかかりではばね指が考えられる
・指先が曲がったまま伸びない場合はマレット指が考えられる
・セルフチェックは診断ではなく、痛みが続く場合は整形外科での診断が必要

この記事で分かること

  • 手首・親指・指の痛みで考えられる主な原因
  • 痛む場所による疾患の見分け方の目安
  • セルフチェックを行うときの注意点
  • 整形外科を受診した方がよいサイン
  • 装具が使われる場合の基本的な考え方

まず大切なのは「どこが痛いか」

手の痛みは、痛む場所によって考えられる原因が変わります。

たとえば、同じ「親指が痛い」という訴えでも、手首の親指側が痛いのか、親指の付け根が痛いのか、指の付け根が痛いのかによって、疑われる疾患は異なります。

痛む場所・症状 考えられる主な原因 特徴
手首の親指側が痛い ドゥ・ケルバン腱鞘炎 親指を動かす、物をつかむ、手首を小指側へ倒す動作で痛みやすい
親指の付け根が痛い 母指CM関節症 つまむ、ひねる、フタを開ける、鍵を回す動作で痛みやすい
指の付け根が痛い ばね指 指の曲げ伸ばしで引っかかる、朝にこわばる、掌側の付け根が痛い
指先が曲がったまま伸びない マレット指 突き指などのあとにDIP関節が伸びにくくなる
手首の小指側が痛い TFCC損傷など 手をつく、ひねる、ドアノブを回す動作で痛むことがある

この表はあくまで目安です。実際には複数の症状が重なっていたり、別の疾患が隠れていたりすることもあります。


手首の親指側が痛い|ドゥ・ケルバン腱鞘炎

こんな症状がある場合

  • 手首の親指側が痛い
  • 親指を広げる、伸ばす動作で痛い
  • 物をつかむ、抱っこする、タオルを絞る動作で痛い
  • 手首を小指側に倒すと痛みが強くなる

ドゥ・ケルバン腱鞘炎は、親指を動かす腱と腱鞘の間で炎症が起こる疾患です。

特に、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が通る手首の親指側で痛みが出やすく、育児、家事、スマホ操作、仕事での手の使いすぎなどがきっかけになることがあります。

確認されることが多いテスト

いずれも親指を小指側へ引いたり、手首を小指側へ倒したりして痛みが誘発されるかを確認する方法です。

注意
痛みが強い場合に無理にテストを行うと、症状を悪化させる可能性があります。セルフチェックはあくまで目安であり、診断は整形外科の医師が行います。

ドゥ・ケルバン腱鞘炎について詳しくは、 ドゥ・ケルバン腱鞘炎とは?原因・特徴・装具の考え方を義肢装具士が解説 でまとめています。


親指の付け根が痛い|母指CM関節症

こんな症状がある場合

  • 親指の付け根が痛い
  • ペットボトルや瓶のフタを開けると痛い
  • 洗濯ばさみ、鍵、ドアノブなどで痛みが出る
  • 親指の付け根が出っ張ってきたように見える

母指CM関節症は、親指の付け根にあるCM関節に痛みが出る疾患です。

親指は、つまむ・握る・ひねる動作で大きな力がかかります。そのため、CM関節に負担がかかると、関節の痛みや不安定感につながることがあります。

確認されることが多いテスト

ドゥ・ケルバン腱鞘炎と痛む場所が近いため、臨床では混同されやすい疾患です。手首の親指側なのか、親指の付け根の関節なのかを確認することが重要です。

母指CM関節症について詳しくは、 CM関節症とは?原因・特徴・装具の考え方を義肢装具士が解説 をご覧ください。


指の付け根が痛い・引っかかる|ばね指

こんな症状がある場合

  • 指の付け根の掌側が痛い
  • 指を曲げ伸ばしすると引っかかる
  • 朝に指がこわばる
  • 曲がった指を伸ばすときにカクンと戻る

ばね指は、指を曲げる腱と腱鞘の間で炎症が起こり、腱の滑走が悪くなることで生じる腱鞘炎です。

親指にも起こることがあり、親指の付け根の痛みとして感じられることもあります。

確認されることが多いポイント

ばね指について詳しくは、 ばね指とは?装具の種類・適応・メカニズムを義肢装具士が解説 でまとめています。


指先が伸びない|マレット指

こんな症状がある場合

  • 突き指のあとから指先が伸びない
  • DIP関節が曲がったままになっている
  • 自分の力で指先をまっすぐ伸ばせない
  • 痛みや腫れが軽くても指先だけ垂れている

マレット指は、指先のDIP関節を伸ばす仕組みが損傷し、指先が曲がったまま自力で伸ばせなくなる外傷です。

いわゆる突き指と思って放置されることがありますが、腱が切れている腱性マレットや、骨がはがれる骨性マレットの場合があります。

マレット指では、DIP関節を伸展位で保つことが非常に重要です。自己判断で曲げ伸ばしを繰り返すと、治療期間や予後に影響する可能性があります。

注意
突き指後に指先が伸びない場合は、早めに整形外科で評価を受けることが重要です。痛みが軽くても、腱損傷や骨折を伴うことがあります。

マレット指について詳しくは、 マレット指とは?装具の種類・適応・固定の仕組みを義肢装具士が解説 をご覧ください。


手首の小指側が痛い場合も注意

この記事では主に親指側や指の痛みを中心に説明していますが、手首の小指側が痛い場合には、TFCC損傷などが関係することがあります。

手をついたあとから痛い、ドアノブを回すと痛い、手首をひねると小指側が痛いといった場合は、手首の靱帯や軟骨に関係する損傷が隠れていることもあります。

外傷後の痛みや、手をつく動作で痛みが強い場合は、自己判断せず整形外科で相談しましょう。


セルフチェックは診断ではありません

インターネットで調べると、フィンケルシュタインテストやグラインドテストなど、さまざまな確認方法が出てきます。

しかし、これらはあくまで痛みの出方を確認するための目安であり、診断そのものではありません。

セルフチェック時の注意

・強い痛みがある場合は無理に行わない
・何度も繰り返して痛みを誘発しない
・痛みが出たからといって自己判断で疾患名を決めない
・外傷後や腫れが強い場合は早めに医療機関を受診する

手や指は小さな関節・腱・靱帯が複雑に関係しているため、似たような痛みでも原因が異なることがあります。


整形外科を受診した方がよい目安

次のような場合は、早めに整形外科へ相談しましょう。

  • 痛みが1〜2週間以上続いている
  • 腫れや熱感がある
  • 物をつかむ、つまむ動作に支障がある
  • 指が引っかかる、伸びにくい
  • 突き指後に指先が伸びない
  • 手をついたあとから痛みが続いている
  • 痛みがだんだん強くなっている
  • しびれや感覚の異常がある

特に、外傷後の痛みや、指が伸びない・動かせないといった症状がある場合は、腱損傷や骨折が関係している可能性があります。

痛みを我慢して使い続けるよりも、早い段階で原因を確認することが大切です。


装具が使われることもあります

手首・親指・指の痛みに対しては、診断や症状に応じて装具が使われることがあります。

装具は、痛みのある部位を安静に保ったり、関節の動きを制限したり、腱や関節にかかる負担を減らす目的で使用されます。

症状・疾患 使われることがある装具 目的
ドゥ・ケルバン腱鞘炎 母指から手関節を固定する装具 母指と手関節の動きを抑え、腱鞘への負担を減らす
母指CM関節症 母指CM関節を支持する装具 つまみ動作時の関節負担を軽減する
ばね指 指装具・スプリント 指の曲げ伸ばしを制限し、腱鞘部の負担を減らす
マレット指 DIP関節を伸展位で保持する装具 指先を伸ばした状態で保ち、腱や骨折部の治癒を助ける
装具の使用について
治療用装具は、医師の診察・処方に基づき、症状や目的に合わせて選択されるものです。 自己判断で購入・使用すると、症状に合わなかったり、療養費の対象外となる場合があります。 痛みが続く場合は、整形外科などの医療機関で相談してください。

装具の種類や考え方については、以下の記事でも詳しくまとめています。


関連する疾患・装具の記事

気になる症状がある場合は、以下の記事も参考にしてください。


まとめ

手首・親指・指の痛みは、痛む場所や痛み方によって考えられる原因が変わります。

  • 手首の親指側が痛い:ドゥ・ケルバン腱鞘炎の可能性
  • 親指の付け根が痛い:母指CM関節症の可能性
  • 指の付け根が痛い・引っかかる:ばね指の可能性
  • 指先が曲がったまま伸びない:マレット指の可能性

痛む場所や簡単なチェックからある程度の目安をつけることはできますが、自己判断だけで原因を決めることはできません。

痛みが続く場合、腫れがある場合、突き指後に指が伸びない場合、日常生活に支障が出ている場合は、整形外科で医師の診断を受けましょう。

装具の使用について
治療用装具は、医師の診察・処方に基づき、症状や目的に合わせて選択されるものです。 自己判断で購入・使用すると、症状に合わなかったり、療養費の対象外となる場合があります。 痛みが続く場合は、整形外科などの医療機関で相談してください。
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